検査結果の項目解説


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グルコース 尿酸
ソルビトール 痛風
フルクトース 糖尿病
ミオイノシトール 糖尿病予備軍
1,5アンヒドログルシトール(1,5AG) 豆知識



グルコース

ブドウ糖とも言い、砂糖から分解されてきて、体や脳のエネルギーになります。特に脳の活動を維持するのに重要な、唯一の栄養素なのです。

脳はどの臓器よりも多くのエネルギーを消費するにもかかわらず、そのエネルギー源となるのはブドウ糖だけ。脳は、安静にしていても1日120g、1時間に5gものブドウ糖を消費する臓器です。また脳は少量しかブドウ糖を蓄積することができないので、常にエネルギーの補給が必要です。そのため全身の血中ブドウ糖濃度を一定レベル(血液1dl当たり約100mg)に保つことが重要です。

ブドウ糖は多くの食品に含まれており、余程のことがない限り、摂取不足によるブドウ糖の欠乏はありません。逆に、食事からのとりすぎや、或いは体が様々な障害でブドウ糖の利用がうまくできない場合、血液中のブドウ糖(血糖)濃度が高くなり、腎臓から尿にあふれ出てしまい、尿は甘味を呈し、糖尿病となります。初めての糖尿病患者さんが見つかったのは、犬が糖尿病患者の甘い尿を舐めていたからです。


ソルビトール

ソルビトールはブドウ糖の還元によってできる糖アルコールの一種で、梨、りんご、プラムなどの果実類に含まれている化合物です。ソルビトールは砂糖の約60%の甘味度をもち、他の糖類に比べて発酵しにくい、脂質の酸化を防止、でんぷんの老化を防ぐ、タンパク質を安定化させるなどの特性があるため、食品添加物として広く使用されています。

一方、血中のグルコース(ブドウ糖)濃度が高くなる糖尿病患者の場合には、グルコースが変化して出来るソルビトールの量も多くなり合併症を引き起こしやすい。網膜症・腎不全・神経障害といった糖尿病の合併症は、ソルビトールが細胞内に溜まる結果起こると報告されています。


フルクトース

果糖とも言い、果物やハチミツに含まれる天然の糖分です。甘みは糖類中最高、エネルギー効果が砂糖の3倍もあり、体内で消化や分解の過程を経ずにエネルギー化出来るため、疲労回復には有効な即効性のある栄養源と言えます。ぶどう糖よりも肝臓や筋肉でグリコーゲンへの変化率が高く、運動中の低血糖を防ぐ効果があります。スポーツ選手のエネルギー補給用としても効果的です。

果糖の血中濃度は通常ブドウ糖濃度の500分の1しかありませんが、増加すると、高尿酸血症や中性脂肪血症、高乳酸血症が惹き起こされると言われています。一方、糖尿病患者の尿中、血液中の果糖濃度が正常者に比べ高く、糖尿病合併症の進行に関与すると判明しました。


ミオイノシトール

本来、神経細胞内にはミオイノシトールと言う物質があります。ところが高血糖が続きますと、そのミオイノシトールが減少してしまいます。それが神経細胞の機能障害の原因となっていると言う説です。


1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)

1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)は構造がグルコースに似たポリオールで、体内に豊富に存在し、ごく少量ずつ毎日の食物より供給され,余分なものは尿へ排泄されます。1日の尿中排泄量と経口摂取量はほぼ均衡しています。糖尿病の場合は、高血糖に伴うグルコース排泄(尿糖)により、1,5AGの再吸収が競合阻害を受け、尿中への排泄が増加し、結果的に血中の1,5AG濃度は低下して、尿中の1,5AG濃度は増加します。1,5AG濃度は、現在ないし直近の血糖値状態と一番よく相関するもので、経時的1,5AGの測定により一定期間の血糖の流れが明確に示され、糖尿病の治療効果や患者の状態の把握に有用です。


尿酸

尿酸は、細胞の中にある核酸のプリン体が分解されてできたものです。尿酸の原料は食物(特に肉類)にも含まれており、これらを食べることによっても体内で尿酸が作られることになります。体内では、尿酸が毎日一定量つくられ、一定量が主に腎臓から排泄されてバランスを保っています。尿酸を作りすぎ、尿中への排泄の減少、あるいはその両方が原因で高尿酸血症が起こります。長期間続くと痛風を惹き起こす可能性が高くなります。現在、全国の痛風患者は約60万人、高尿酸血症患者はその約10倍であると推定されており、高尿酸血症は、高血圧症や糖尿病などと同様な生活習慣病として注目を集めています。


痛風

痛風は、血液中の尿酸濃度の高い状態が長く続いた後に、体内にたまった尿酸が原因で関節炎が起こったり、腎臓が侵されたりする病気です。中高年の男性(99%)に多い病気とされてきました。痛風になりやすいタイプは、行動的、大食い、酒飲みというように“エネルギーの出し入れの大きい人”がかかる傾向にあります。社会的に活躍している人に多い病気でもあります。


糖尿病

糖尿病の定義

糖尿病とは、血糖値の高い状態が長く続き、網膜症、腎症、神経障害など、さまざまな合併症を起こす病気です。糖尿病には、「1型糖尿病」と、「2型糖尿病」に分けられますが、日本の糖尿病患者の約99%は2型糖尿病です。

日本の糖尿病患者数

日本人の糖尿病患者の発生頻度は、戦後以来食事から摂取した脂肪の量と個人所有車の登録自動車数に平行して増加しています。つまり、食生活の変化と生活習慣の変化によりカロリーの過剰摂取と運動不足は糖尿病患者が増える最大な原因です。よって、生活習慣病と名付けられました。厚生労働省の2002年糖尿病実態調査の速報値によりますと、現在日本人の糖尿病患者が740万人に昇り、糖尿病予備軍も880万人の合計1620万人で、毎年数百万人の勢いで増加しています。国民6.3人に1人に当たる高い比率の国民病です。

糖尿病は非常に恐い病気です

糖尿病は一旦発症すると治りませんので、一生糖尿病と付き合って行かなければなりません。初期は高血糖ショックと低血糖の発作がなければ生活の支障はあまりなく、経過が長くなるのにしたがい、さまざまな合併症が現れます。

慢性的な細小血管症が原因で網膜症、腎症、神経障害を合併し、網膜症による成人失明、壊疽による下肢切断、腎症による人工透析の導入、神経障害による神経痛などで心身共に障害を受け、生活質が低下します。大血管症による動脈硬化で心筋梗塞、脳梗塞を発症し死に至ることもある大変恐い病気です。


糖尿病予備軍

糖尿病未病ともいいます。

未病の観点から糖尿病をあてはまると、インスリンの分泌に異常があっても、血糖値は正常、あるいは「境界型」である人を「糖尿病未病」と呼びます。この状態が長く続くと、インスリンの働きが弱くなり、インスリンを分泌する膵臓が疲れてインスリンの分泌が減り、糖尿病になります。

この未病状態をより早期にケアすることで、健康ゾーンに戻る可能性もあり、糖尿病ゾーンへの移行を遅らせることもできることが1つの知恵ではないでしょうか。逆に糖尿病未病というと、「まだ糖尿病ではないから安心」と考える人も多いのですが 、糖尿病未病の間にも、肥満、高血圧、高脂血症、動脈硬化などさまざまな異常が進行し、お互いに悪影響を及ぼし合うので、対策が必要です。したがって、未病といっても、放置すると大変な結果に繋がる恐れがあるので、注意すべきです。

一般に糖尿病予備軍とか境界型などと言われるのは、血糖値が正常範囲を越えているが、糖尿病の診断基準に当てはまるほどには上昇していないグループを指し、血糖値の範囲で表しますと、空腹時血糖値が110〜125mg/dlで、食後血糖値が140〜199mg/dlの方を予備軍と見ています。調査によりますと10年前の糖負荷試験で「正常型」と判定された人のうち、10年後に糖尿病に進んでいるのは4.8%であるのに対し、「境界型」と判定された方の場合は20〜60%が糖尿病へ進んでいたとの結果が報告されています。


豆知識

未病
未病とは健康と病気の間の状態を指します。健康の状態というのは自覚症状もなく、検査値も正常の状態であり、病気は自覚症状も検査値の異常もある状態ですが、未病の状態というのは、自覚症状はないが、検査値に異常がある状態といえばわかりやすいと思います。

検査によってよく発見される未病の疾患は非常に多いです。例えば、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、高尿酸血症、動脈硬化、骨粗しょう症、無症候性脳梗塞、潜在性心不全、脂肪肝、HIV陽性者などがあります。

糖負荷試験
糖尿病が疑われる患者に対して行われる検査で、経口ブドウ糖負荷試験と静脈内ブドウ糖負荷試験がありますが、ここではより一般的に行われる経口ブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test)について説明いたします。経口ブドウ糖負荷試験では、75gのブドウ糖を経口摂取し、そのブドウ糖の摂取前(=空腹時)と摂取後2時間後の2度の血糖測定により、糖尿病であるかどうかを判定します。

判定基準は日本糖尿病学会により以下のように定められています。

  • 空腹時血糖値126mg/dl以上または2時間後血糖値200mg/dl以上
    のいずれか1つでも当てはまる場合=糖尿病型
  • 空腹時血糖値110mg/dl未満なおかつ2時間後血糖値140mg/dl未満の場合=正常型
  • 上記のいずれにも当てはまらない場合=境界型

メタボリックシンドローム
動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の危険性を高める複合型リスク症候群を「メタボリックシンドローム」という概念のもとに統一しようとする世界的な流れの中、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会、日本内科学会の8学会が日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準をまとめ、2005年4月に公表しました。

本診断基準では、必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方cm以上)のマーカーとして、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上を「要注意」とし、その中で ?血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満) ?血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上) ?高血糖(空腹時血糖値110mg/dL) ---の3項目のうち2つ以上を有する場合をメタボリックシンドロームと診断する、と規定しています。




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